覆面企画7&8感想 ※ネタバレにはご注意ください。

【A01 糸子教授の人生リセット研究所】『でも本人がそれを望んだんだから、仕方ないわよね』腹に一物も二物も抱えていそうな癖のある登場人物のなかで、糸子先生の純粋さといったら! 潔いほどのマッドサイエンティストぶりに、気持ちよくなりました。とはいえ、人生リセットした人たちは自分の望みを叶えられたわけで、糸子先生の言うことも一理……いやでもループ地獄だし、やっぱりマッドだ。このブロックは人外との接触を描いた作品が多い印象を受けたのですが、糸子先生もこのカテゴリに近いかも。
【A02 アフロディーテーの手】『嘘をつくのが上手い人間と欺されるのが上手い人間の出会いだった』「アフロディーテーの手」というタイトルが指すのは、亡くなった恋人の手なのかなと途中まで思っていたのですが……千裕と美姫、それからDRMー018ー042ー30F。全編を通して、三者の腕が、指が、記憶が、想いが、愛おしそうに寄り添い絡み合っている。本格的なSFでありながら、曖昧にとろける存在と思い出が実に人間くさい。素敵な作品でした。
【A03 導かれた先は】特別な事件が起こるわけではないものの、次どうなるのかな? とわくわくしながら読み進めました。お兄ちゃんと妹のやりとりが可愛らしくて微笑ましいです。『紹子にだって絶対できる』根拠はないけど一番説得力がある言葉。お兄ちゃん優しいなあ。最後、「シルクハット被ったおじさん」の存在が非日常的で、でも作中で語られてはいないので、読みながら色々と想像してみました。自分も紹子と同じ目線になれて、そこがまた楽しかったです。
【A04 地面に手が生えていた】『小学生の興味を甘く見ていた。もう限界だと思った』この犯人は盗撮のみならず、地下に潜って手をうようよさせる性癖の持ち主だったのでしょうか。だって小学生の興味を引くだけなら他にもやりようがありますし……。人間というものの悲哀を感じずにはいられません。
【A05 現代人外住宅事情】『妖怪だって現代に合わせてアップデートするのよ』座敷わらしの手形を鑑識に回したら指紋はとれるのかな、いや現代の妖怪は指紋も偽造してたりして。防犯カメラ対策までしてるかも? しかし見てくれが現代風にアップデートされていても、人ならぬ存在を都合のいいように使おうなんて思ったら手痛いしっぺ返しを食らうという教訓は不変ですね。ラスト、扉の向こうには何がいるんでしょうか。人間でもお化けでも、正体がわからないものが一番怖い。それもまた不変です。
【A06 魔女と秘密の88手】『八年分のこの呪いーー例えもう七十年掛かったとしても、呪い返してやらなくては気が済まない』主人公の、自分のことを「賢い僕」なんて言っちゃう迂闊さが可愛い。僕は何でも知ってる、世の中なんかつまらないことだらけ。そんな幼い全能感の固まりみたいな彼にとって、非合理的で不条理な魔女の存在はよっぽどインパクトが強かったんだろうなと思います。素直な子供だったらその場で驚くだけで、ここまで後を引かなかったかも? 恋とはすなわち呪いのかけ合い。なかなかお似合いな二人です。
【A07 最果ての巫女】『魔性の密に惹かれ、身を滅ぼした哀れな蝶の翅が重なり合う、渇望の残骸だけが』出会いの物語が地の文ではなく台詞で語られることで、まるで一幕物の戯曲のような味わいが出ていて素敵です。梟が母鳥と慕う灰白の口から「母親殺しの孤児」という言葉が出てドキっとしました。すべてを求める子供と、拒む母親。二人の行く末は果たして……。少しだけ血のにおいがして、でもとても美しい。端正に綴られた世界にうっとり酔わせて頂きました。
【A08 巡り巡って】『でも、あの小さな手は誰かが掴まえててあげなきゃいけないと感じた』誰か悪者がいるわけじゃない、でもなぜかうまくいかない。かといって解決策も見つからない……そんな煮詰まった環境にいるナツキは、きっと大人が想像している以上にしんどいはず。そんな中で、逃げ場があるっていうのは大切なこと。実際に行けなくても会えなくても、そこに「ある」と思えることが。サトエもそういう存在なのかな?
【A09 手を貸した話】『最近、Aさんの手が妙に黒っぽくなってしなびて来たようなーー。いえ、やっぱり私の気のせいですよね』最後の最後でぞくりとしました。日本の神様って願いを叶えたら対価を要求してくるという意識があって、幸運続きだと逆に不安になるのは国民性ってやつなのでしょうか。そんな感覚にそっと触れてくるような正統派の怪談、びくびくしながらも楽しませていただきました。
【A10 ハンスと五本指の魔法】『この足を優しく包み込んでくれる、美しくて高貴で柔らかい靴があれば、どこまでも歩くことができますもの』好きな男性を追ってひとりで城を抜け出す。そんな大胆な行動ができるお姫様なら、職人のおかみさんとしてもうまくやっていけそうですね。ハンスの願いで実体化した狼や大男や執事たちが、願いを叶えたあとにふっと消えてしまうのではなくて、腿肉を食べたり山を一緒に降りてくれたり見送ってくれたりするのが楽しかったです!
【A11 黄昏時にその店は開く】『その貯金箱は、明良の料理に満足したやつが募金するところだ。(略)そんな奴がそこにお金を入れる権利なんてねーぞ』作中に出てくるどのお料理もおいしそう! でも、おいしいご飯だけじゃなくて、さり気なく居場所も提供してくれる。現代のおとぎ話みたいなお店ですね。子供たちの生活の細かい描写がないのが逆に優しい。ゆるやかに繋がった人間関係が居心地がいいです
【B01 ―― ス・ガ・ル・テ】『私は今の私の顔があの生き水子ー母にそっくりだということを知っている』霊も恐いけど人間が一番恐い、とはよく聞く言葉ですが、まさにこのお話がそんな感じで、血の通った生々しい恐怖がある。母娘の関係性とか、下半身の重さや肉体的な痛みとか、女性的な「嫌なもの」がこれでもかと細部まで肉感的に描写されて、読んでいる間ずっと緊張感がありました。恐くて夜にひとりで読めなかった……。
【B02 フーガには二つ星を連ねて】『揺りかごの隣で角笛を鳴らすのはだれ?』森の人の台詞はどれも詩的で美しい。それからちょっと残酷。容姿の説明がなくても最初のこの一言で、普通の人間とは違う存在なんだということが伝わってきます。銀の幕という言葉もとてもきれいで、愚かしくも愛おしい二人の物語を締めくくるにはぴったりの表現だと思いました。
【B03 ジャクリーンの腕】『ええ、私は最初から私よ。ずっと、ね』人間の感覚というのは、自身が思っているよりもずっと不確かなもので、曖昧な予備知識と勝手な思いこみで成り立っているのかもしれません。マスコミや聴衆の的外れな意見にジャクリーンが最後の台詞でぴしゃりとやり返してくれますが、果たして自分も彼女の演奏を先入観なしに聴くことができるかどうか? そう考えると、クリフの設定がさすがだなあと思いました。
【B04 マリー・アントワネットの手を取って】『いつか女優にも娼婦にも花嫁にも家庭教師にも給仕にも修道女にもピアノ弾きにも踊り子にも!(略)なんにだってなれる少女になれた!』狭いクローゼットと香水のにおいと、ママがふわふわ呼ぶ声で満ちた世界から飛び出した女の子が、自立したひとりの女性に育っていく課程が鮮やか。そのあとの、『そういうことをきちんと教えてくれたの、まだアナタひとりだけなのよ、嘘つき男』という一文もおフランスの香りがして好きです。
【B05 赤い手 白い手】『これで君は自由だ/これでわたしは自由だ』初読のときは、鞠子恐いな!と思ったのですが、じっくり読み込むと、大きいもの、小さいもの、真っ直ぐなもの、歪んだもの、露わになったもの、巧妙に隠されたもの……鞠子以外にも色んな悪意が渦巻いているみたい。もしこの中にささやかな善意や優しさがあったとしても、全部悪意に飲み込まれてしまいそうな真っ黒さ。鞠子は自由にはなれなそうですね。
【B06 手児奈物語】『春風のみならず風というものは毎日吹くものではありません。(略)翌日は風がありましたので、風に乗って漢詩の一説が記されていました』風の吹く日は風が、吹かない日は鳥が手紙を届けてくれる。風、草花、それから季節の移り変わり……自然と柔らかく同化する感覚は現代日本に生きる自分にはないもので、とても憧れます。春風と共に始まるこの物語。佳き紙、佳き筆がつなぐ三人の関係も、まるで風のように心地いいです。
【B07 イハンスにやらせろ】『俺に何ができるかを、人が話してるのが分かったんだ。あんな事初めてだった』ヨーイもイハンスも居場所ができてよかったね。パリっと乾いた文体に密度の濃い物語、中世に書かれた小説を読んでいる気分になりました。独特なにおいのする文章は、このお話の作者さんにだけ書けるものだと思います。羨ましいです。余談ですが、修道院手話が出てきてときめきました!
【B08 花咲と白い犬】『全裸の男が赤い首輪してると、ものすごいインパクトだね。学習した』あやかしに襲われ、飼っていた犬は全裸の男に変身し……と結構大変な事態になっているのに、咲良のツッコミがどこかマイペースで冷静で、そのギャップが楽しくて最後まで面白く読ませていただきました。不知火がどんな方法で口説いているのかが気になります。
【B09 手の行く方へ】『風邪をひくのでお休みを頂いて良いですか?』ちょうどこのお話を読んでいたのが通勤途中、私も職場に電話一本入れてどこかに行ってしまいたいと半分本気で思いました。遠い町でサングラスをした(たぶん)化け狸が待っていてくれると考えたら、それだけでわくわくします。「手が歩く」と聞いてホラーを想像していましたが、軽やかに歩く手はとてもユーモラス。主人公の手も楽しそうに歩いていたのでしょうか。確かに毎日頑張ってるんだから、たまには歩いてもいいよね。
【B10 ローマでも長安でも洛陽でもない、ある都の休日】『柔らかく男の両手を包むと、ひとまとまりになった四つの手は、そのまま数舜、澄んだ空気の中に象嵌されたように静止した』ともにしたこと、してあげたこと、してもらったこと。主人公の語る思い出のひとつひとつが温かく響いて、同時に、二つの人生がもっと深いところで交わる可能性があったこと、しかしもはや過去のものとなったことを感じました。このまま再会しなくてもそれぞれの矜持を抱いてそれぞれの道を進んだでしょうが、きちんと別れの形をとれたことは彼らにとって大きな意味があるんだろうなと思いました。清々しい出会いと別れの物語でした。
【B11 手探りカデンツァ】『その”くらもっちゃん”って呼び方、私にモチモチ感があるみたいで嫌だからやめて欲しいんですけど』日本語の名前ってファンタジックな名前より印象に残りにくい気がするんですが、このお話ではくらもっちゃんと窓野くんの名前が読後も心に残りました。もちろん「知り合い」から「ちょっと親しい人」に変わっていく微笑ましい課程も。窓野って名前、すごく素敵でいいなあ。
【D01 秘密が見える目の彼女】『普段はおとなしいのに、かけている眼鏡を外すとおしゃべりなバカになること』眼鏡を外すとおしゃべりになる女の子ってめちゃくちゃかわいい! ほとんど二人の会話で話が進んでいきますが、テンポがよくて、全然飽きずに最後まで楽しく拝読しました。しかし中居にとって家族の問題は、何より「恥ずかしいこと」なのが悲しいしリアルですね……。
【D02 神の庭】『愛してる』「愛されて欲しい」「愛していいかしら」リュミエレは愛という単語を何度も使いますが、子供が覚えたての言葉を繰り返しているみたい。具体的にリュミエレの過去は描かれていないものの、その描写だけでうっすらと伝わってきます。壮大な物語の序章をのぞき見させてもらった感じです。
【D03 couturiere】『花園に咲く花は、それこそ群をなすほどがいい』自分がいいと思うものを作るのは最低条件で、さらに顧客の要望を取り入れ、花嫁が最高に引き立つデザインを考え抜いて……まさにプロの仕事です。1年目は、一番きついし悩む時期でもあると思います。真夜中にひとり頑張る主人公にエールを送りたくなる作品でした。
【D04 子どもを助けたら勇者と呼ばれた件について】『自転車のおにいちゃん』お前かー!とすっかり魔王の掌で踊らされてびっくりしてしまいました。ここであの選択をしたからこそ、彼は勇者なんだろうな。現代の聖女様が年上の女性なのがドキドキする。しかも不慣れな手つきでスマホいじってるっていうのがまたポイント高いよね、と個人的な趣味で失礼しました。
【D05 夢を視ないという夢】『きっと今でも、僕は目を覆ってもらっているのかもしれない』これから恐くなる?恐くなっちゃう?とビビりながら読み進めていったのですが、いい意味で予想を裏切りられました。最後の一文に温かい愛情を感じます。主人公が「視る人」ではなく、「視ない人」なのが新鮮で面白かったです。
【D06 ヴォストーク・デイ】『そして、ふと見上げた空には、美しいオーロラと美しい三日月がかかっているのでした』普通だったら、二人の生死は?異常気象で世界滅亡しちゃうの?と心配になってしまう展開なのに、語り口調やペンギンの存在、段々と現実と幻覚の境界がぼやけていく構成が絶妙で、ラストがただただ美しい。とても好きなお話です。
【D07 オズ ―知識の光をもたらした魔女―】『車が猛スピードで駆け抜けていく道は魔女が散策を楽しむのには不向きだった』戦争の記述がなくても、この文章を読むと何となくこの世界がだめになった理由がわかる気がします。現在に繋がる過去と未来を見ていた魔女と、現在だけしか見ていなかった人間。長い寿命を与えられても、結局三つの世界は交わらなかったと……。
【D08 嗚呼 美シキ兄妹愛哉】タイトルは、終盤カフェを出るときの克巳の呟きなのかなと思いました。ちょっと悪戯っぽくて、でも温かい感じ。考え方も言動も大人の克巳と(伝票を持ってくところとか、さりげない仕草で描写されているのがお上手です)、子供っぽいところがある冬哉が好対照。弟みたいに思ってるのかな。いいコンビですね。
【D09 てとてとて】家族の持ち物を身につけてひとりで公園にいるテトちゃんの姿を思い浮かべるだけで胸がつまるのに、『お家の匂いのするリュックを抱きしめて』のあたりで涙腺崩壊寸前。アシモフの三原則じゃないけど、ロボットって「自分のため」に「遊ぶ」ことのできない存在なんだなあ。
【D10 吾輩はルンタくんである】『テレッテレー』ルンタくんの魅力がこれでもか!というくらい作中に溢れていて、思わず通販サイトでルン某をポチるところでした。危ない。オーナーも彼女もいい人で、とても癒されました。最後まで読み終わってしまって、ルンタくんとお別れするのが寂しかったです。……やっぱりポチるか。
【E01 銀の御手のサジタリウス】『古い、それはとても古い記憶だ』いて座といえばケンタウロスが思い浮かんで(勝手に)、サジが一角獣を射止めたのは、神殺しというか同族殺しの禁忌を犯したような感覚がありました。金と銀と銅が糸のように縒り合わさって織物になっているみたいで、わざわざ解くの野暮かしらと思いつつ美しい物語に浸らせて頂きました。
【E02 五月の庭、蕾の君は目を閉じたまま】タイトルが素敵です。ちょっと遠いところから、庭のベンチに腰かけているあきらを見つめているこうちゃんのイメージ。優しくて温かい眼差しを感じます。寂れた公園とこうちゃんの庭の対比が鮮やかで、本当に楽園みたい。こうちゃんの書く小説読んでみたい!
【E03 機械細工職人と機械義手】『香水は付けているようだったが、加齢臭が少し勝る』この描写を読んで、クリフォードさんという人がぐっと近くに感じられました。野暮ったくて油まみれ、でもどこか色気があるような。師匠と弟子という距離感があったからこそ長いこと上手くやれていたのかも知れないけど、まるで自分に言い聞かせるように「師匠と弟子」という言葉をライザが何度も繰り返すのが少し悲しい。
【E04 飲み干す残滓】『ねえ、咲希、頼むから俺を見てよ』冒頭はラストからしばらく経ったあとの独白なのかな。お姉ちゃんは欲望を満たしてくれたし、飲み干してくれたけどまだ満足できないのは、「孝之」を見てるんじゃなくて「君」を見てるから? 弟の愛(っぽいもの)はどこまでいっちゃうんでしょうね……。
【E05 キズアト】『家族以外に液晶制御版を触られたのは初めてで、恥ずかしかったし途中で変な声も出た』憎からず思っている人に縋られたり強請るようにされたらぐらっときちゃうじゃないですか。先生ずるいなーと思っていたら、最後の最後でクレアちゃんが大活躍してくれました。きっと彼女ならハッピーエンドを掴み取ってくれるはず!と期待してます。
【E06 幕張でバーチャルアイドルミゾレと握手】澤良木さん、何をするにも不器用だけど一生懸命さが伝わってきて、ヒヤヒヤさせられながらも応援せずにはいられません。それが、最後の最後でまさかの暗証番号忘れ。『やっと会えたね!』と言われた瞬間、澤良木は泣いたんじゃないでしょうか。私もちょっと泣いた。
【E07 楽園の手】『気高さを感じるものから情欲をかきたてられるものまで、ありとあらゆる表情の手がそこに生っていた』……主人公の「手」にはないものの描写が逆に生々しく感じられました。彼が食べているのは自分自身の手でしょうか。それとも、手の形をした別のものかも、と色々考えてしまいます。
【E08 それは手記にも似た】『私たちは歩いた。海辺の街を。花咲くみどりの丘を。都会の喧騒の中を』私と「何か」の世界はゆるやかで曖昧ですが、この一文がふっと鮮やかに現れて、素敵な思い出だったんだろうなと思わせてくれました。彼らにとって「手記にも似たもの」は救いになったようですが、もしその人の心に隠されていたのが恨みや憎悪であったら……ちょっと怖いかもしれません。
【E09 夜の谷で】『癒すしか出来ないとされたその手は今、何に触れているのだろう』全編を通して悲劇的ではあるものの、ベダクの人物描写からくるのか、不思議な清涼感のある読後感でした。ベダクの告白は初対面の人に話すには重すぎる内容ですが、言葉にせずにはいられなかったのかな。切ないです。
【E10 夢の異世界ダンジョンへGO!】『僕の棺桶の中には、二本の人間の手が存在していた』手はどこに行っちゃったんだろうと思いながら読み進めていくと……そこか! リズミカルでスピーディな話運びで、最後までとても面白く拝読しました。
↑ここから覆面企画8の感想となります。印象に残った一文(タイトルの場合は省略させて頂きました)を引用させて頂いております。読み違い等あるかと思いますが、ご容赦頂けると幸いです。
【B11 祈跡満つ】人生に疲れ切ったおじさんと女の子、個人的にすごく好みでした! サラァの売る刺繍も、あやとりで作られた文様も見てみたい。文章の合間から焚きしめた香のかおりが漂っているような、とても素敵なお話でした。
【B10 龍呼舞】ユニセックスな神官と踊り子のやりとりにほのかな色気を感じました。龍の行動を客観的に考えると強引で勝手ですが、まあ龍だから仕方ないか、と思えてしまいます。龍には抗いがたいロマンがある。
【B09 秋風渡り、金木犀を濡らす】血の臭いの代わりに葡萄酒の香りが満ちる戦場の描写が印象に残りました。凄惨な場面と公主の美しさとの対比が鮮烈です。不思議な味わいの七夕異譚、楽しませて頂きました。
【B08 メガネ男子と虹の空】知り合ったばかりのぎこちなさが初々しくてどきどきしながら拝読しました。意外と積極的な樽見さんと対照的な副島さんの鈍感っぷりが可愛いかったです!
【B07 Luz del amor】カーテンの件から考えて、ルスと一緒に暮らし始めて日が浅いに違いない。つまり新婚さん! ピジャヴィカが引っ張り出さない限り、ルスは光の世界で生きようとは思わないんじゃないかなあと思います。
【B06 クビをキレ】マリーさんとかオーギュストさんみたいな人いるいる〜と思った方は多いのではないでしょうか。オーギュストとの恋物語でもはじまるのかと思いきや、あっさり首を切られたので却って小気味よい後味でした。
【B05 聖女とロザリオ】どうしようもない事態に陥ったとき、急に理不尽な声が力を持ち始めるのは、今も昔も、異世界でも現代でもあんまり変わらないと思いました。古い詩歌のような素朴さと力強さを感じました。
【B04 ダンジョンマスター】ダンジョンも冒険も生死も社会制度に組み込んで、娯楽にしてしまうビーが恐ろしい。人間の皮をかぶった魔王ですね。しかし、安定した給与と賄い付きは確かに魅力的です。鬼のご飯の食材は人間じゃないよね……?
【B03 あたしは太陽】ふわふわとした空気と微かな緊張感に、懐かしいような眩しいような気分になりました。ずっと一緒、って感覚は大人になるときれいになくなってしまうので。あさちゃんの部屋は絶対甘くていいにおいがするはずだ。
【B02 百八代魔王と勇者の関係性】事務文書的ながら、どこか飄々としてほのぼのとした雰囲気で、最初から最後まで楽しく拝読しました。最後にぽろりと零れた「筆者」の苦悩がまたいいスパイスになっていて、読後感がとても良かったです。
【B01 君は光】私が選んだことだからと言うけれど、「僕」に感情を吐露したあたり、お姉さんも相当苦しんでるんじゃないかなと思いました。口にすることで自分の気持ちを確かめているような……。
【A10 光をこの手に】属性の設定が整理されていて、すっと頭に入ってきました。SF的な世界に生きているのに皆人間くさくて、私たちと同じように小さなことで悩んだり、嬉しくなったりする様に、とても微笑ましい気持ちになりました。
【A09 御嵩城幻夢伝】蛇神は姫その人を欲していたわけではなく、ゲームの駒でも扱うように重則を試していたんですね。歴史上の様々な事件の裏側には、こんな神様が楽しそうに運命を弄んでいるのかも知れないなと思いました。
【A08 HIKARI】自身が光となり、希望となって人々の心を照らしていたライトですが、最後の最後でやっと自分の眼に光を映すことができたのですね。心温まるお話でした。
【A07 ちいさな魔女とフローライトレンズ、祈り】友達のために一生懸命がんばる小さな魔女が可愛かったです。二人が並んで歩く時間には限りがあるけれど、限りがあるからこそ輝いているんだろうなと思いました。
【A06 蛍火】ほの明るい夏の空気を堪能させて頂きました。文を交わして育む愛情もいいですが、思い出が繋ぐ縁も素敵ですね。次宮は紅絹子を貰い受けるために努力して力をつけたのかもな、と想像してしまいました。
【A05 花は地に落ちて】女の業を知った姫と少年の面影を残す紀昭の対比が鮮やか! 紀昭の眼には、姫の姿がかつての少女のままに映っているのが皮肉だと思いました。主君と姫、両方手に入れようとした彼も結構ずるいような気がします。
【A04 After Pandora -溺れゆく希望-】古き良き懐かしいSFを読んでいる気分になりました。前編を通して柔らかく温かい雰囲気なのに、どこかほの暗い。だからこそ、夜光虫の形をしたほんの少しの希望が心に残るのかもしれません。
【A03 あの、透明な水を、この手に。】男心を弄ぶつもりはなかったのでしょうが、罪作りな女の子です。適当な距離を保っていた二人の関係が崩れてしまって、これからどうなっていくのかな?と考えるのが楽しかったです。
【A02 国境いの灯台守】冒頭では曖昧だった物語の輪郭が、次第に明らかになっていく課程が嵐の夜の雰囲気とぴったりで、わくわくしながら拝読しました。読書の醍醐味を味合わせて頂きました。
【A01 これは災厄の物語?】現代に座敷童がいたらこんな感じなのかな。とっても可愛いお話でした。大場さんは結局ハルヒちゃんに押し切られそうな気がします。読んだ後、無性にコーヒーが飲みたくなります。