子どもの聖者
第四夜
 その夜、若いお嫁さんは、古いいすに深く腰かけて、せっせと編み針を動かしていました。毛糸があちらこちらにくるくるとまわりながら、だんだんとそのかさを減らしていきます。お嫁さんは目をきらきらとかがやかせて、晴れやかな高い声で、思わず手をと っておどりたくなるような、明るい調子の歌を口ずさみました。
 一方、旦那さんのほうはというと、むっつりと黙りこんで、大きな手のなかの小さな木彫り細工を、がりがりとにぶい音をたてて削りつづけていました。
 そこへ、扉をとんとんとたたく音が聞こえたものですから、お嫁さんは編み針をおいて立ちあがりました。旦那さんは渋い顔でいいました。
「おい、むやみやたらに開けるんじゃねえぞ。この時分に戸をたたくなんざあ、盗っ人ぐらいしかいねえだろ」
 お嫁さんは、ほおをぷくっとふくらませました。
「でも、宿なしの旅の人だったらどうするの? こんな寒い夜、外にいたらこごえ死んじまうよ」
 旦那さんは舌打ちひとつして、
「勝手にしろ」
といいすてました。
 おそるおそるお嫁さんが戸をあけると、そこにはニルスさまとそのともびとが立っていました。お嫁さんはおどろいて、大きなひとみをさらにまんまるくしました。
「まあ、ニルスさま。どうなさいました。うちに小さな子どもはおりませんよ!」
 ニルスさまは茶目っ気たっぷりに、ふさふさした白い頭をかきました。
「おお、しまった。一年早かったようだな。来年になったら、すてきなおくりものをもってまたお邪魔しよう」
 そうふたりにいうと、にわか風が通りすぎるように、あっという間に姿を消してしまいました。お嫁さんは何事かとけげんな顔でしばらく考えこんでいましたが、やがて自分のお腹にそっと手をあて、旦那さんのほうをふりむきました。ふっくらとみずみずしいほおは、ほんのり赤くそまっていました。
 旦那さんはお嫁さんに駆けよって、それはもう顔がとろけんばかりにうれしそうに、お嫁さんの細いからだをがっしりした腕で抱きあげました。お嫁さんは旦那さんにしっかりつかまって、くすくすと楽しげな笑い声をたてました。
「あんたのばか力でそんなにきつく抱いたりしら、あたしたちのかわいい子がびっくりしちゃうわ!」