#アンミナ #サイアン #アンサイ #女王候補と執事 #恋愛未満『かわいいひと』続きを読む「……というわけで、レイナってすごくかわいいんですよ!」 アンジュはサイラスに向かって力説した。手早く朝食のテーブルを整えながら、サイラスが適当なタイミングで相槌を打つ。「それはそれは」「大陸の民に貰ったお花、押し花にして全部大事にとってあるんです。それを嬉しそうに見せてくれて。もうだめすべてがかわいい……」 アンジュはたまらないというように、クッションに顔を押し付けた。「なるほど。昨夜はずいぶんと盛り上がったようですね」 ちなみに、サイラスがやってきてからずっとアンジュはソファに横になったままである。昨日飲んだアルコールが抜けきっていないのだ。 溶けたアイスみたいなアンジュと朝食の載ったトレイを交互に見てから、サイラスが尋ねた。「ところでいいんですか、朝食は通常のメニューで。スムージーかお粥でもお持ちしましょうか」「ありがとう、でも大丈夫。頭がちょっと痛いだけで、胃の調子はいいんです。……あー、昨日は部屋で一緒に飲めて本当に楽しかったな。レイナから誘ってくれたのはじめてだったし。誘ってくれるときもかわいかったなー……緊張なんてしなくてもいいのに」「仲が良いのは何より。ライバルとはいえ、志を同じくする仲間でもありますからね」 シューソテーのオープンサンドの横に冷たい牛乳の入ったグラスを置いて、サイラスがアンジュの顔を覗き込んできた。「このままだとグーグー寝て過ごされそうですが……せっかくの休日ですし、そのでろんでろんの状態から回復したら、守護聖様方とお出かけされたらいかがでしょう。いいリフレッシュになりますよ」「あはは、がんばりまーす。そうそう、レイナもかわいいですけど、サイラスもかわいいですよね」 クッションに気持ちよく顔を埋めたまま、アンジュは何気なく言った。トレイを持ち替えようとしたサイラスの手が、一瞬止まった。「サイラスっていつも本気なんだかふざけてるんだかわからないですけど、この間森の湖でご家族や弟さんの話をしてたとき、すごくいい表情してたんですよ。気づきませんでした? そのとき、あっこの人かわいいなって思ったんです」「……ほう。それは気づきませんでした」「あと、通販でいいものが買えた日は鼻歌のトーンが普段とちょっと違うんです。それから、鳥の鳴き真似が会心の出来だったとき。フッって唇のあたりが動くの。みんなかわいいです」「まあ、人のことまでよくご覧になってますね」 クッションから顔を上げて、アンジュは彼女の執事に明るく笑いかけた。「いつも一緒にいてくれますから」「…………」 不自然な沈黙が生まれたものの、それをすっと払いのけるようにして、サイラスは胸に手を当てる例のポーズでにっこりと微笑んだ。「お褒めに預かり光栄ですよ、アンジュ様。では、私はこれで。良き日の曜日をお過ごし下さい。クルッポー」 そしてよくわからないタイミングで鳩の鳴き声を残し、風のように去って行った。「サイラスも、良い休日をー……くるっぽー……」 充電不足、とばかりに再びクッションと一体化して、ヘロヘロと力なく手を振る。 寝返りを打った拍子にふと朝食の並んだテーブルを見ると、確かに置いていたはずの牛乳のグラスをサイラスがなぜかまた持って帰ってしまったらしいことに気づいて、アンジュは首を傾げたのだった。畳む 2024/03/13
『かわいいひと』
「……というわけで、レイナってすごくかわいいんですよ!」
アンジュはサイラスに向かって力説した。手早く朝食のテーブルを整えながら、サイラスが適当なタイミングで相槌を打つ。
「それはそれは」
「大陸の民に貰ったお花、押し花にして全部大事にとってあるんです。それを嬉しそうに見せてくれて。もうだめすべてがかわいい……」
アンジュはたまらないというように、クッションに顔を押し付けた。
「なるほど。昨夜はずいぶんと盛り上がったようですね」
ちなみに、サイラスがやってきてからずっとアンジュはソファに横になったままである。昨日飲んだアルコールが抜けきっていないのだ。
溶けたアイスみたいなアンジュと朝食の載ったトレイを交互に見てから、サイラスが尋ねた。
「ところでいいんですか、朝食は通常のメニューで。スムージーかお粥でもお持ちしましょうか」
「ありがとう、でも大丈夫。頭がちょっと痛いだけで、胃の調子はいいんです。……あー、昨日は部屋で一緒に飲めて本当に楽しかったな。レイナから誘ってくれたのはじめてだったし。誘ってくれるときもかわいかったなー……緊張なんてしなくてもいいのに」
「仲が良いのは何より。ライバルとはいえ、志を同じくする仲間でもありますからね」
シューソテーのオープンサンドの横に冷たい牛乳の入ったグラスを置いて、サイラスがアンジュの顔を覗き込んできた。
「このままだとグーグー寝て過ごされそうですが……せっかくの休日ですし、そのでろんでろんの状態から回復したら、守護聖様方とお出かけされたらいかがでしょう。いいリフレッシュになりますよ」
「あはは、がんばりまーす。そうそう、レイナもかわいいですけど、サイラスもかわいいですよね」
クッションに気持ちよく顔を埋めたまま、アンジュは何気なく言った。トレイを持ち替えようとしたサイラスの手が、一瞬止まった。
「サイラスっていつも本気なんだかふざけてるんだかわからないですけど、この間森の湖でご家族や弟さんの話をしてたとき、すごくいい表情してたんですよ。気づきませんでした? そのとき、あっこの人かわいいなって思ったんです」
「……ほう。それは気づきませんでした」
「あと、通販でいいものが買えた日は鼻歌のトーンが普段とちょっと違うんです。それから、鳥の鳴き真似が会心の出来だったとき。フッって唇のあたりが動くの。みんなかわいいです」
「まあ、人のことまでよくご覧になってますね」
クッションから顔を上げて、アンジュは彼女の執事に明るく笑いかけた。
「いつも一緒にいてくれますから」
「…………」
不自然な沈黙が生まれたものの、それをすっと払いのけるようにして、サイラスは胸に手を当てる例のポーズでにっこりと微笑んだ。
「お褒めに預かり光栄ですよ、アンジュ様。では、私はこれで。良き日の曜日をお過ごし下さい。クルッポー」
そしてよくわからないタイミングで鳩の鳴き声を残し、風のように去って行った。
「サイラスも、良い休日をー……くるっぽー……」
充電不足、とばかりに再びクッションと一体化して、ヘロヘロと力なく手を振る。
寝返りを打った拍子にふと朝食の並んだテーブルを見ると、確かに置いていたはずの牛乳のグラスをサイラスがなぜかまた持って帰ってしまったらしいことに気づいて、アンジュは首を傾げたのだった。
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