#アンミナ #サイアン #女王と執事 #恋愛未満女王のゲーム続きを読む 目の前にふわりと落ちてきたのは、顔の大きさほどもあるサイコロだった。アンジュは、両手でそれを受け取った。見た目に反して雲のように軽い。ホログラムだからだ。 足元に向けて転がすと、二、という目が出た。とたんに、サイコロは霧のように消えてしまった。「また二かあ。なかなか進みませんね」 令梟宇宙の女王は、残念そうな表情で隣にいる執事を見た。「千里の道も一歩からですよ、陛下」「私たち、これから千里も歩くんですか?」「そうでないことを祈りましょう」 真っ白い空間に、光の円が二つ現れる。アンジュとサイラスはそこに向かって進んだ。「ふむ」 サイラスが浮き上がった指示を読み上げる。「このマスに止まった人は鳩の鳴きマネをする、だそうです」「サイラス、お願いします」「クルッ、クルッ、クルッポー」 鳩の鳴きマネが認められたようで、再びサイコロが現れた。「今のは鳩語で何て意味なんですか?」 サイラスは目を伏せ、胸に手を当てた。「意味はありません。心で感じていただければ、と」「また適当な……」 アンジュが感心したように呟いた。「それはともかく、鳩のマネだってちゃんと判別するんですね」「ええ。コケコッコーではダメですよ。そのあたりの判定は厳しめにしております。私の好みで」 二人がいるこの空間、すなわち自動生成される立体すごろくなるものを作り出した張本人はにっこりと笑った。 女王の故郷であるバースの年中行事をテーマにしたパーティーで、皆で楽しめるちょっとしたゲーム、という名目で登場したこのレクリエーションプログラムは、仮想世界で白熱したすごろくを楽しめるという画期的なものである。「仕事の合間によく開発しましたよね、こんなにすごいもの」「ありがとうございます。が、申し訳ございません。予期せぬエラーが発生し、まさかのまさか、ゴールが消失してしまうとは」「仕方ありませんよ。守護聖たちが一生懸命になりすぎて、サクリアが混乱状態になるなんて私でも予想できませんでした」 守護聖、特に年長者たちが勝負事になると大人げなくなるのを失念していた。 中盤以降はすごろくというよりバトルという様相で、サクリアの高まりに危険を感じたアンジュは、自分以外の参加者を女王の力で強制的に脱出させた。と思っていたので、サイラスが残っていたのを知ったときは仰天したものだ。 彼は飄々と告げた。「この空間に危険性はありませんが、私には管理者としての責がありますし、陛下おひとりを残すわけには参りません」 フィールドにいる限りゲームは続く。 というわけで、二人は力を合わせて終わりなきすごろくをすることになったのだった。 そのとき、サイラスの胸元から電子音がした。「朗報ですよ、陛下」 言って、取り出したタブレットの画面をアンジュに示した。「今、タイラーくんが頑張ってプログラムの修正をしてくれています。そのうち復旧しますので、しばらくの間は引き続きすごろくをお楽しみください」「そうですね。楽しまないともったいないですよね」 えいっ、と投げたサイコロの目は、「一」「ま、のんびりいきましょう」 一緒にジャンプするように、軽やかな足取りでマスを進む。 聖地では女王と執事と呼ばれていても、サイラスとアンジュは、ここでは二人でひとつの駒に過ぎない。 そう思って何となく手を繋いでみたのだが、掌から伝わる冷たい感触が離れていく気配はなかったので、ゴールに辿りつくまで、アンジュはそのままでいることにした。畳む 2025/01/01
女王のゲーム
目の前にふわりと落ちてきたのは、顔の大きさほどもあるサイコロだった。アンジュは、両手でそれを受け取った。見た目に反して雲のように軽い。ホログラムだからだ。
足元に向けて転がすと、二、という目が出た。とたんに、サイコロは霧のように消えてしまった。
「また二かあ。なかなか進みませんね」
令梟宇宙の女王は、残念そうな表情で隣にいる執事を見た。
「千里の道も一歩からですよ、陛下」
「私たち、これから千里も歩くんですか?」
「そうでないことを祈りましょう」
真っ白い空間に、光の円が二つ現れる。アンジュとサイラスはそこに向かって進んだ。
「ふむ」
サイラスが浮き上がった指示を読み上げる。
「このマスに止まった人は鳩の鳴きマネをする、だそうです」
「サイラス、お願いします」
「クルッ、クルッ、クルッポー」
鳩の鳴きマネが認められたようで、再びサイコロが現れた。
「今のは鳩語で何て意味なんですか?」
サイラスは目を伏せ、胸に手を当てた。
「意味はありません。心で感じていただければ、と」
「また適当な……」
アンジュが感心したように呟いた。
「それはともかく、鳩のマネだってちゃんと判別するんですね」
「ええ。コケコッコーではダメですよ。そのあたりの判定は厳しめにしております。私の好みで」
二人がいるこの空間、すなわち自動生成される立体すごろくなるものを作り出した張本人はにっこりと笑った。
女王の故郷であるバースの年中行事をテーマにしたパーティーで、皆で楽しめるちょっとしたゲーム、という名目で登場したこのレクリエーションプログラムは、仮想世界で白熱したすごろくを楽しめるという画期的なものである。
「仕事の合間によく開発しましたよね、こんなにすごいもの」
「ありがとうございます。が、申し訳ございません。予期せぬエラーが発生し、まさかのまさか、ゴールが消失してしまうとは」
「仕方ありませんよ。守護聖たちが一生懸命になりすぎて、サクリアが混乱状態になるなんて私でも予想できませんでした」
守護聖、特に年長者たちが勝負事になると大人げなくなるのを失念していた。
中盤以降はすごろくというよりバトルという様相で、サクリアの高まりに危険を感じたアンジュは、自分以外の参加者を女王の力で強制的に脱出させた。と思っていたので、サイラスが残っていたのを知ったときは仰天したものだ。
彼は飄々と告げた。
「この空間に危険性はありませんが、私には管理者としての責がありますし、陛下おひとりを残すわけには参りません」
フィールドにいる限りゲームは続く。
というわけで、二人は力を合わせて終わりなきすごろくをすることになったのだった。
そのとき、サイラスの胸元から電子音がした。
「朗報ですよ、陛下」
言って、取り出したタブレットの画面をアンジュに示した。
「今、タイラーくんが頑張ってプログラムの修正をしてくれています。そのうち復旧しますので、しばらくの間は引き続きすごろくをお楽しみください」
「そうですね。楽しまないともったいないですよね」
えいっ、と投げたサイコロの目は、
「一」
「ま、のんびりいきましょう」
一緒にジャンプするように、軽やかな足取りでマスを進む。
聖地では女王と執事と呼ばれていても、サイラスとアンジュは、ここでは二人でひとつの駒に過ぎない。
そう思って何となく手を繋いでみたのだが、掌から伝わる冷たい感触が離れていく気配はなかったので、ゴールに辿りつくまで、アンジュはそのままでいることにした。
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